
今日、映画『ディスクロージャー・デイ』を観てきました。
スティーヴン・スピルバーグ監督の新作で、10月1日から全国で公開されています。
地球外の存在をめぐる「真実の開示」をテーマにした作品です。
あらすじは公式の情報に譲ります。
結末にも触れません。
ただ、観ながらずっと考えていたことがあります。
開示しようとする側と、守ってきた側。
同じ事実を前にして、立場によってまったく違う態度をとる。
その構図です。
そして帰り道、ふと思いました。
技術士という資格についても、開示してみてはどうか、と。
「技術士は最高峰」は本当か
技術士は、よくこう紹介されます。
「科学技術に関する国家資格の最高峰」
建設の分野では特に、このように言われることが多いと思います。
私自身も技術士です。
ですから、この言葉を否定したいわけではありません。
ただ、受験生だった頃から、少しだけ引っかかっていました。
本当に、すべての技術士がそうなのだろうか。
今日は、その問いに私なりに答えてみます。
先に結論を書きます。
最高峰と言える部分もあるし、そうとは言えない部分もある。
資格が保証してくれるものと、保証してくれないものがある。
それが、私の開示(Disclosure)です。
資格が保証しているもの
まず、制度として確かなことから。
技術士は、技術士法に基づく国家資格です。
技術士法が公布されたのは1957年。
日本の高度経済成長が始まった頃にあたります。
技術士法には、技術士が守るべきことが定められています。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 第44条 | 信用失墜行為の禁止 |
| 第45条 | 秘密保持義務 |
| 第45条の2 | 公益確保の責務 |
| 第46条 | 名称表示の場合の義務 |
| 第47条の2 | 資質向上の責務 |
いわゆる「3義務2責務」です。
公益確保と資質向上の責務は、2000年の法改正で明示されました。
そして試験を通っている以上、一定以上の専門知識と、技術者としての倫理を学んだ人であることは確かです。
ここまでは、資格が保証してくれる部分だと思います。
資格が保証していないもの

一方で、資格が保証してくれないものもあります。
その方の人柄です。
若手だった頃、ある説明会で一人の技術士の方と同席したことがあります。
その方は、とても強い口調で、自分たちの意向どおりにするよう求めていました。
言葉の内容よりも、その威圧感のほうをよく覚えています。
当時の私は、まだ技術士ではありませんでした。
正直に言って、怖かったです。
技術士にも、いろいろな人がいるのだと感じた出来事でした。
ただ、これは一つの場面での、私の受け止め方です。
その方にも、その場なりの事情があったのかもしれません。
そして、私がこれまで出会った技術士の多くは、穏やかで、親身になってくれる方々でした。
頼んでもいないのにアドバイスをくれる方、
自分が受けた恩を次の世代に返そうとする「恩送り」の姿勢で後輩を支える方。
そういう方のほうが、ずっと多かったと思います。
だからこそ言えるのは、資格は人柄までは保証しないということです。
合格したら、終わりなのか
もう一つ、資格が保証しないものがあります。
合格したあとの学びです。
先ほどの表にある第47条の2「資質向上の責務」。
技術士は、知識と技能の水準を向上させるよう努めなければならない、とされています。
ただ、これは努力義務です。
技術士になったあと、それを通過点として学び続ける人がいます。
一方で、取った時点で終わったと感じる人もいる。
私の周りを見ていても、そう感じる場面があります。
試験の傾向についても、一つ私の印象を書いておきます。
最近は対策の手法が整理され、若い方が合格する例も増えてきたように感じます。
それ自体は良いことです。
ただ、試験に通るための準備と、技術士として働き続けるための力は、同じものではありません。
これは統計で示せる話ではなく、私が現場で感じていることです。
名称独占という立ち位置
制度の話を、もう一つだけ。
技術士は名称独占の資格です。
技術士でない人が「技術士」を名乗ることは、法律で禁じられています(第57条)。
一方で、医師や弁護士のような業務独占ではありません。
技術士でなければできない業務が、法律で一般に定められているわけではない、ということです。
ただし建設の分野では、少し事情が違います。
国土交通省の建設コンサルタント登録制度では、登録する部門ごとに「技術管理者」を置く必要があり、その要件は原則として技術士とされています。
国交省の認定を受けた者でも認められますし、登録自体は任意の制度です。
それでも、公共事業を受注する建設コンサルタントの多くが登録していることを考えると、技術士は、建設コンサルタントの現場では事実上、とても大きな意味を持つ資格だと言えます。
制度上は名称独占。
現場では、それ以上の重み。
この二つが同時に成り立っているのが、建設分野の技術士です。
受け止め方は、人それぞれでいい
映画の話に戻ります。
地球外の存在が開示(disclosure)されたとき、
「当然だろう」と受け止める人もいれば、
「そんなものがいるはずがない」と受け止める人もいる。
同じ事実でも、受け止め方は人によって違います。
技術士も同じだと思います。
最高峰だと感じる人もいる。
変わった人もいるんだな、と感じる人もいる。
どちらも、現実の一部です。
だから私は、これから技術士を目指す方に、こう伝えたいと思っています。
資格が自分を何者かにしてくれる、と期待しすぎないでください。
技術士という資格は、その人が積み上げてきたものを証明する一つの形です。
そして合格したあと、どういう技術者として働くかは、資格ではなく本人が決めることです。
自分にとっての技術士を決める

技術士試験の勉強は、知識を詰め込む作業だけではありません。
自分はどんな技術者でありたいのか。
社会にどう貢献したいのか。
その問いに、何度も向き合うことになります。
私の場合、それが試験を通じて得た最も大きなものでした。
最高峰かどうかは、資格が決めるのではありません。
その資格を持った人が、どう働くかで決まるのだと思います。
もし、あなたがいま技術士を目指しているなら。
ぜひ試験の向こうにある「自分にとっての技術士」を、一度考えてみてください。
それが見えている人の勉強は、たぶん、折れにくいです。
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この記事を書いた私も、
最初から技術士だったわけではありません。
学歴の壁からゼロで始め、資格に人生を捧げ、
一度は心を壊しかけました。
その遠回りを、5話の自分史にまとめています。
※本記事の技術士制度に関する記述は、技術士法および国土交通省の建設コンサルタント登録制度の公表資料に基づいています。人物や試験傾向に関する記述は筆者個人の経験と印象であり、特定の個人・団体を評価するものではありません。映画の内容は公式発表の範囲で紹介しています。
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