赤ペンの書き込みが密に入った技術士試験の添削答案

技術士試験の指導をしていて、ふと、自分が受験生だった頃の資料を開いてみました。

出てきたのは、手書きの添削をスキャンしたファイルです。

赤ペンが、びっしりでした。

十数万円の講座で、私が言われた言葉

当時の私は、十数万円の添削講座を受けていました。

さらに職場には技術士の上司が二人いて、指導をもらえる環境にもありました。

条件としては、恵まれていたと思います。

その答案に、こう書かれていました。

「×××」

「題意に即してない」

「全然だめ」

「問題文を理解してない」

いま読み返すと、言われて当然でした。

私は、問題文が求めていることを書いていません。

自分が知っている知識を、ひたすら並べているだけでした。

「俺はこれを知っているんだ」と言わんばかりの、独りよがりの文章です。

読んでいて、恥ずかしくなりました。

5回受験して、3回落ちています

ここからが、今日いちばん伝えたいことです。

その状態から、私は合格しました。

ただし、一度ではありません。

河川、砂防及び海岸・海洋は、平成26年に落ちて、翌年の2回目で通りました。

港湾及び空港は、平成29年に落ち、平成30年にも落ち、3回目でようやく通りました。

合わせると、5回受験して、3回落ちています。

私は、頭がいいほうではありません。

学生時代の成績は、いつも平均でした。

要領のいい人が1年で通るのを、何度も横で見てきました。

それでも通れたのは、たった一つのことを続けたからだと思っています。

完璧にはなれないけれど、勉強は続ける。

これだけです。

完璧を求めるのは、評価基準が高いからです

開かれないままの参考書と冷めたコーヒーが置かれた夜の机

多くの方が、勉強の手を止めてしまいます。

理由は、やる気がないからではありません。

逆です。

自分の中の評価基準が高いからです。

「まだ理解が浅いから、書くのは早い」

「この分野を固めてから、答案に入ろう」

「この状態で見せたら、恥ずかしい」

その感覚は、技術者としては正しいものです。

仕事なら、成果物に責任を持つプロとして当然の意識だと思います。

でも、これは試験です。

試験には締切があり、合格ラインがあります。

完璧な答案を1通も書けないまま試験日を迎えるより、不完全な答案を20通書いたほうが、通る確率は上がります。

レベルを高く保って行動が止まるくらいなら、レベルをうんと下げて、続けたほうがいい。

私はそう考えて、実際にそうしてきました。

上司に笑われても、添削で「全然だめ」と書かれても、同じ受験生にレベルが低いと思われても構いません。

目的は、合格することです。

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開示された点数が、それを証明していました

昨年、過去5年分の得点を開示請求して取り寄せました。

数字を見て、自分でも驚きました。

私の合格は、2回とも、ぎりぎりでした。

平成27年度(河川、砂防及び海岸・海洋)

選択科目Ⅱ 25.50点、選択科目Ⅲ 22.50点、合計48.00点/80点満点。

合格基準は60%以上です。

80点の60%は、48.00点。

1点の余裕もなく、ちょうどでした。

令和元年度(港湾及び空港)

必須科目Ⅰ 25.50点/40点満点、63.75%。

合格ラインの24.00点まで、差は1.50点。

選択科目はⅡとⅢの合計で37.00点/60点満点、61.67%。

合格ラインの36.00点まで、差は1.00点。

答案用紙3枚のうち、半行から1行分の話です。

そして、落ちた年の点数も残っていました。

平成26年度の必須科目Ⅰが16.00点。平成30年度の必須科目Ⅰも、16.00点。

4年を隔てて、まったく同じ点数です。

その4年のあいだに、私は勉強を続けていました。

それでも、点数は1点も動いていません。

努力が数字に表れない期間が、確かにありました。

私は器用な受験生ではありませんでした。

この数字が、それを正直に示しています。

それでも、続けた先で1.50点分だけ届いた。

私の合格は、才能の話ではありませんでした。

弱者には、弱者の勝ち筋があります

ランチェスター戦略という考え方があります。

市場での競争を扱う理論ですが、その中に「弱者の戦略」というものがあります。

強者と同じ土俵で、同じ戦い方をしない。

範囲を絞り、一点に集中する。

試験に置き換えると、こうなると思います。

要領のいい人と同じやり方を、真似しない。

短期集中で仕上げる人、効率的な暗記法を持っている人。

そこで張り合っても勝てません。

代わりに、続けることだけに集中する。

質を落としてでも、頻度を落とさない。

これは、才能ではなく選択でできることです。

これは、試験に限った話ではないと思っています。

いまの仕事や業界で行き詰まりを感じている方も、たぶん同じ場所で止まっています。

「私なんて、RCCM資格で十分だ」

「技術士試験なんてまだ無理」

「準備が整ってから動こう」と考えているうちに、何年も過ぎてしまう。

整った状態は、待っていても来ません。

不器用でも、遠回りでも、動き続けた人のところに結果が来る。

私はそう信じています。

今日、ハードルを下げるために

タイマーと数行だけ書かれたノート

具体的に、3つだけ提案させてください。

1つ目。

今日やる量を、いまの半分に減らしてください。

「1日2時間」を目標にして3日で止まるより、「1日20分」で3か月続いたほうが、総量は7倍以上になります。

2つ目。

答案は、下手なまま人に見せてください。

完成させてから見せようとすると、永遠に見せられません。

骨子だけ、あるいは1枚目だけで構いません。

赤ペンだらけで返ってきても、それは失敗ではなく前進です。

私の答案は「全然だめ」と書かれた状態から始まっています。

ただし、適当に作ったものを“見て”は失礼です。

ご自身で考えて、今できる力で書くことが重要です。

3つ目。

できなかった日は、理由を一行だけ書いてください。

「できなかった」だけだと、反省で終わります。

「出張だった」「夜は資料集めで終わった」まで書くと、次の計画の材料になります。

私の記録は、できなかった日のほうが多いくらいです。

それでも理由が溜まっていくと、自分がどの時間帯なら進むのかが見えてきました。

責めるためではなく、次の一週間を組み直すために書くと考えてください。

おわりに

完璧を求める気持ちは、あなたが真面目な技術者である証拠だと思います。

ただ、その基準が、行動を止めてしまうことがあります。

仕事に持つべき基準と、試験勉強に持つべき基準は、別のものでいいのです。

私の答案は、赤ペンだらけでした。

5回受験して3回落ち、合格した2回もぎりぎりでした。

時間もかかりましたし、犠牲にしたものもあります。

それでも、続けたことが勝因だったと、いまは思っています。

不器用でも、進める道はあります。


不器用でも、進める道はあります。

ただ、一人で続けるのは大変です。
私も、上司と添削者がいたから続けられました。


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