指を3本立てた手元と、開いたノート。文字は判読不能。ミュートカラー

「技術士試験の課題は3つ」

そう覚えている方は多いと思います。

私自身も、そう教わりました。

しかし令和8年度の建設部門・24問を数え直すと、「3つ」と固定した問題は16問だけでした。

残りの8問は、「3つ以上」または「複数」という、別の指定を使っています。

「3つ」と指定された科目で4つ書けば、それは指定違反です。

逆に、「3つ以上」と指定された科目で3つしか書かなければ、指定を満たしているとはいえ、選択肢を使い切れていないことになります。

この記事では、24問を数の指定で分類し、その分類が何と対応しているのかを確認します。

なお、建設部門・全24問を横断した全体像は柱記事(全24問の分析)にまとめています。

この記事は、そのうち課題数の指定という1論点を掘り下げたものです。

24問を、数の指定で分け直す

3種類の指定があった

まず、24問の設問(1)から、課題数の指定文言だけを拾い出しました。

結果は次の3種類に分かれます。

「3つ」固定:必須科目Ⅰ、鋼構造及びコンクリート、都市及び地方計画、河川・砂防及び海岸・海洋、港湾及び空港、道路、鉄道、施工計画・施工設備及び積算の8科目、16問。

「3つ以上」:土質及び基礎、電力土木、トンネルの3科目、6問。

「複数」:建設環境の1科目、2問。

16+6+2で24問。すべての問題が、このどれかに当てはまります。

同じ科目の中では、指定が統一されている

集計していて、もう1つ気づいたことがあります。

Ⅲ-1とⅢ-2で、数の指定が食い違っている科目は1つもありませんでした。

土質及び基礎は、盛土の被害軽減(Ⅲ-1)も、地下インフラの維持管理(Ⅲ-2)も、どちらも「3つ以上」です。

都市及び地方計画は、立地適正化計画の見直し(Ⅲ-1)も、古民家活用(Ⅲ-2)も、どちらも「3つ」です。

つまり、課題数の指定は、問題ごとの裁量ではなく、科目単位で決まっている性質だということになります。

これは、あとで見る理由の説明にもつながる、地味だが重要な事実です。

なぜ3科目だけ「3つ以上」なのか

科目名を書き分ける/分類の章

柱記事の分類と重ねてみる

ここからが本題です。

土質及び基礎、電力土木、トンネル。

この3科目だけが「3つ以上」を使っているのはなぜか。

柱記事では、24問の設問(1)を「一般論を封じる装置」という観点で4つの型に分類しました。

そのうち型2は「対象を先に決めさせる」という装置で、土質及び基礎(対象とする盛土の明記)、電力土木(施設を1つ挙げて工事内容を概説)、トンネル(工法の選択)が該当していました。

この3科目は、いずれもⅢ-1とⅢ-2の両方で型2を使っています。

そして、この3科目こそが「3つ以上」の3科目と、完全に一致します。

対象を絞ると、課題は増える

理由を考えると、筋が通ります。

型2の装置は、答案を書く前に、まず具体的な対象を1つに絞らせるものでした。

盛土の種類。

施設の種類。

工法の種類。

対象が絞られるほど、その対象に固有の技術的な論点は、むしろ細かく分かれて増えていきます。

たとえば盛土といっても、宅地造成、道路、鉄道、河川など、複数の用途が問題文に例示されています。

対象を1つ選んだ時点で、その対象特有の技術課題は、地盤条件、施工条件、維持管理条件など、いくつもの切り口を持ちうる。

ここで「3つちょうど」に絞らせると、対象を絞り込んだ意味が薄れてしまいます。

逆に、型1(観点の範囲を直接しばる)や型3(選択科目に紐付ける)、型4(一般論を名指しで禁じる)といった、テーマ側で枠をはめる装置は、そもそも枠自体が課題の数をある程度制限する働きをします。

範囲が最初から絞られているので、「3つ」で十分な設計になっている、と考えられます。

対象を絞る装置(型2)は課題の数を増やす方向に働き、テーマを絞る装置(型1・3・4)は3つで収まる設計になっている。

これが、数の指定と装置の型が対応している理由ではないかと考えています。

装置がなくても「3つ」の科目がある

ただし、ここで正直に書いておくべきことがあります。

鋼構造及びコンクリートと都市及び地方計画は、柱記事の分類では絞り込み装置が「なし」でした。

それでも数の指定は「3つ」です。

型2以外の装置がない科目は、すべて「3つ」に収まっている、と言えば聞こえはよいのですが、実際には「装置なし=3つ」という単純な図式でもありません。

装置の有無と数の指定の対応は、型2(対象を先に決めさせる)を使う科目=3つ以上、という一方向では成立しますが、その逆(装置がなければ3つ)は必然ではない、という言い方が正確です。

建設環境だけが「複数」である理由は分からない

建設環境の2問は、絞り込み装置もなく、数の指定も「3つ」ではなく「複数」でした。

これは、いま述べた型2との対応関係では説明がつきません。

正直に言えば、なぜ建設環境だけ「複数」という、最も緩い指定になったのかは、24問の分析だけでは分かりませんでした。

生態系ネットワークや循環経済といったテーマの性質上、課題の切り口が事前に絞りにくいという事情があるのかもしれませんが、これは推測の域を出ません。

分からないことは分からないと書いておきます。

実務としてどう備えるか

まず自分の科目を確認する

過去問演習に入る前に、自分の受験科目が「3つ」「3つ以上」「複数」のどれに当たるかを、必ず確認してください。

今年の傾向がそのまま来年に続く保証はありませんが、少なくとも今年の傾向を知らずに演習するよりは、はるかに実践的です。

判断材料として使えるのが、柱記事で整理した4つの装置です。

自分の科目が、対象を先に決めさせる型(対象の特定を求める書きぶり)であれば、「3つ以上」で余裕を持たせてくる可能性を想定しておく。

そうでなければ、「3つ」で固定される可能性を想定しておく。

「3つ以上」は義務ではなく選択肢

ここで1つ、注意しておきたいことがあります。

「3つ以上」と指定されているからといって、多く書けば評価が上がるわけではありません。

答案用紙の枚数は決まっています。

3つの課題を深く掘り下げるのと、4つの課題を浅く並べるのとでは、後者のほうが評価を下げるリスクがあります。

「3つ以上」は、書ける材料がある場合に選択肢を広げてくれる指定であって、無理に数を増やす動機ではありません。

私自身は、よほど明確に4つ目が必要だと判断できる場合を除き、3つで組み立てることをおすすめします。

「3つ」の科目で数を間違えるとどうなるか

逆に、「3つ」と固定された科目で、2つしか書かない、あるいは4つ書いてしまうと、これは明確な指定違反です。

焦って書き始めると、こうした基本的な数え間違いは起こりえます。

答案を書き終えたら、見出しの数を数え直す。

単純ですが、確実な確認方法です。

まとめ

答案用紙を数える/実務の章

「技術士試験の課題は3つ」という理解は、令和8年度の建設部門では16問にしか当てはまりませんでした。

残る8問は「3つ以上」または「複数」です。

そして、この数の指定は科目ごとに統一されており、対象を先に決めさせる型の装置を使う科目(土質及び基礎、電力土木、トンネル)が「3つ以上」を選んでいるという対応関係が見えました。

対象を絞るほど、その対象に固有の課題は増えていく。

だから数の上限を固定しない。

そう読むのが自然だと考えています。

一方で、建設環境の「複数」のように、この対応関係だけでは説明のつかない例外も残っています。

すべてがきれいに割り切れるわけではない、という点も含めて、実際の分析結果としてお伝えしておきます。

まずは自分の受験科目が、24問のうちどの型に属していたかを確認してみてください。


この記事のもとになった全体分析令和8年度技術士試験 建設部門全24問の分析

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※本記事は、日本技術士会が公開した令和8年度技術士第二次試験問題(建設部門)に基づく分析です。数の指定と絞り込み装置の対応関係に関する記述は、問題文の記載から筆者が読み取った仮説であり、公式に示されたものではありません。


ここまで読んで、

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