
「技術士の勉強をしていれば、RCCMは短期間で受かる」
私はずっと、そう思っていました。
実際、一度はそのとおりになりました。
試験の2日前から準備を始めて、合格しています。
ところが4年後、同じつもりで別の部門を受けて、落ちました。
しかも、あと1〜2点というところで。
今回は、この「受かった年」と「落ちた年」の違いを、正直に書いてみます。
RCCMをこれから受験される方にとって、どこに時間を使うべきかの判断材料になるはずです。
なお、制度に関する記述は令和8年度の受験の手引に基づいています。
受験にあたっては、必ず最新の公表資料をご確認ください。
なぜ私は、RCCMを後回しにしてきたのか
まず、私の経緯からお話しします。
周りの技術者は、RCCMを先に取る人がほとんどでした。
上司も複数部門のRCCMを持っています。
建設コンサルタントの現場では、ごく自然な順序です。
ただ、私はその様子を見ていて、少し気後れしていました。
RCCMはCPD(継続教育)の取得単位が多く、講習や講座に追われているように見えたからです。
資格を取った後も、ずっと何かに追われ続けるのか、と。
そして何より、私は技術士のほうに向かっていました。
技術士補を取得し、実務経験4年を満たしてすぐ、第二次試験に挑戦しました。
会社の新年会で「一発で技術士を取ります」と宣言までして。
結果は、一度目は不合格です。
宣言した手前、格好はつきませんでしたが、二度目で合格しました。
その後も学習は続き、平成31年には2つ目の部門となる港湾に合格。
さらに総合技術監理部門を目指して勉強を始めましたが、コロナ禍もあって途中で断念しました。
つまり私は、何年もの間ずっと技術士試験の対策をしていて、RCCMは一度も受けていなかったわけです。
2021年:鋼構造及びコンクリートで合格。準備は実質2日
RCCMを初めて受けたのは、令和3年(2021年)です。
会社の勧めでした。
部門は鋼構造及びコンクリート。
このときの記録が手元に残っています。
試験A(業務経験・択一)は、前日からの準備でした。
一番大変だったのは、択一ではなく業務経験の記述の暗記です。
択一は過去問と同じ出題もあり、1時間ほどで終えて退出しました。
試験B(記述式・専門)は、手ごたえとしては完璧に近い出来でした。
問題Ⅲのテーマは「維持管理と長寿命化」。
骨子を準備していたので、つらつらと書けたという感覚です。
問題Ⅳの基礎部分も過去問からの出題が多く、問題なく解答できました。
このとき私が書き残した感想が、これです。
技術士試験を受験し、日ごろから情報を多く収集していれば、ある程度の分野で資格が取得できると思った。
正直な実感でした。
そして結果は合格。
「やはり技術士の勉強をしていれば大丈夫だ」と、私は結論づけたわけです。
ただし、この時点で見落としていたことがあります。
同じ感想文に、私はこうも書いていました。
問題Ⅳ-2は、試験Bで一番苦労したところで、(中略)ちょっとの試験勉強ではまったく太刀打ちできなかった。
部門の専門技術を問う部分(問題Ⅳ-2)だけは、歯が立っていなかったのです。
このときは他で余裕があったため、そこを埋めて合格できました。
この一点が、4年後に効いてきます。

制度が用意している、見えにくい落とし穴
ここで、RCCMの制度について2つ確認しておきます。
この2つが噛み合うと、思わぬ罠になります。
ひとつ目。
当たり前ですが、すでに合格した部門は二度と受験できません。
受験の手引には「すでに合格している部門の受験はできません」と明記されています。
つまり私は、2021年に鋼構造及びコンクリートで合格した時点で、次に受けるなら必ず別の部門を選ばざるを得ない状態になっていました。
ふたつ目。
受験資格の実務経験年数は、部門を問いません。
受験資格として必要な実務経験は、大学卒業なら7年、高校卒業なら11年です。
そしてこの年数は「建設コンサルタント等業務に従事した年数の合計」であり、部門は不問とされています。
この2つを並べると、構造が見えてきます。
2つ目の部門を取ろうとすると、必然的に自分の主戦場から離れる。
しかも受験資格の側は、それを止めてくれない。
私が2025年に上水道を選んだのは、そういう流れの中でのことでした。
手引にも「業務内容について、受験可能か否かはご自身でご判断ください」とあります。
判断は、受験者に委ねられているわけです。
2025年:上水道で不合格。あと1〜2点
令和7年(2025年)、私は上水道部門で受験しました。
そして不合格。
得点は、あと1〜2点足りませんでした。
何が違ったのか。
振り返ると、はっきりしています。
違い①:書き慣れた領域ではなかった
上水道は、私がそれまで最も多くの時間を費やしてきた領域とは言えませんでした。
経歴そのものは要件を満たして出願していますが、書き慣れた分野と、そうでない分野とでは、論文の作りやすさがまるで違います。
普段から使っている用語であれば、自分の言葉で自然に書けます。
ところが、そうでない領域では、一語一語を確かめながら組み立てることになる。
結果として、暗記にも通常より時間がかかりました。
前日の出張(南大東島)の行き帰りで暗記に励み、当日の朝も最後まで詰め込む。
テキストをAIに読ませて音声で聞くという工夫もしてみましたが、効果のほどは分かりません。
手ごたえは70%程度でした。
なお、経験業務の記述は必ず自分の実務経験に基づいて、自分の言葉で書くことが大前提です。
手引にも「受験の際に経験業務として記述する業務は、建設コンサルタント等業務実績証明書に記載したものより選択してください」と明記されています。
出願した部門と業務内容が噛み合っていなければ、そもそも成立しません。
ここは近道を探すべきところではない、というのが2度受験しての実感です。
違い②:問題Ⅲは書けた。しかしⅣ-2が壊滅した
問題Ⅲについては、前回同様に対応できています。
社内の受験者からの情報をもとに、事前公表されているテーマのうち2つに絞って骨子を準備。
実際の出題はそのうちの1つでした。1,550字を書き切っています。
問題は、やはり問題Ⅳ-2でした。
半分ほどは何を問われているのか分からない。
感想文にはこう書いています。
問題Ⅳ-2は1日程度の勉強では太刀打ちできないので、わかりやすいところだけ、事前に解いて覚えた。 確実に合格をめざすのであれば、問題Ⅳ-2が重要となると思う。
前回は他で稼いで埋められた穴が、今回は埋まらなかった。
それが1〜2点差の正体です。
違い③:その年の合格率そのものが違った
これも正直に書いておきます。
私が合格した2021年度の合格率は47.1%でした。
CBT方式に移行した直後で、過去最高水準です。
一方、不合格だった2025年度は34.4%。
RCCMの合格率は2022年度の48.2%をピークに低下し、2024年度は31.7%まで落ち込みました。
2025年度はわずかに戻したものの、30%台にとどまっています。
つまり2021年の私は、専門に近い部門を、最も受かりやすい年に受けていた。
この事実を抜きにして「技術士の勉強をしていれば受かる」と語るのは、フェアではありません。
科目別に見た、「技術士の勉強」が効く範囲

2年分の経験を、科目ごとに整理するとこうなります。
| 科目 | 技術士の学習は効くか | 必要な準備 |
|---|---|---|
| 問題Ⅰ(業務経験の記述) | 効かない | 暗記に2日。書き慣れた領域かどうかで負荷が変わる |
| 問題Ⅱ(法制度・建設一般・倫理) | 部分的に効く | 過去問+最新動向 |
| 問題Ⅲ(管理技術力) | 強く効く | 骨子準備で1〜2日 |
| 問題Ⅳ-1(土木の基礎知識) | あまり関係ない | 過去問1周で十分 |
| 問題Ⅳ-2(部門の専門技術) | 効かない | 専門外なら相当の対策が必要 |
(問題Ⅳは公式には1科目で、土木共通の基礎知識と部門の専門技術知識から成ります。ここでは実際の出題に合わせてⅣ-1・Ⅳ-2と区分しています)
見ていただきたいのは、技術士の学習が武器になるのは問題Ⅲだけだという点です。
一般に、RCCMで不合格になる人は問題Ⅲで落ちると言われます。
記述式論文に慣れていない方にとって、ここが最大の関門になるためです。
しかし、技術士の学習を積んだ人にとっては、話が逆になります。
問題Ⅲは最も戦いやすい科目になり、代わりに問題Ⅳ-2という別の壁が現れる。
私が2度の受験で経験したのは、まさにこれでした。
ここから導かれる、2つの結論
結論①:部門選びが、勉強時間そのものを決める
コンクリート、土質及び基礎のように、土木の共通基盤に近い部門であれば、技術士の学習の蓄積がそのまま効きます。
私が2021年に短期間で合格できたのは、これが大きい。
一方、上水道のように自分が普段最も多く手がけている領域から少し離れた部門を選ぶと、問題Ⅳ-2と業務経験の記述の2つで、想定以上の負荷がかかります。
「技術士の勉強をしているから大丈夫」は、ここでは通用しません。
しかも先ほど見たとおり、2部門目を狙う人は、制度上ほぼ必ずこの状況に置かれます。
会社の都合で受験部門が決まることもあるでしょう。
いずれにせよ、その部門にどれだけ書き慣れているかで、必要な準備量は数倍変わるという見積もりを、最初にしておくべきです。
なお前提として、出願する部門と自分の業務経歴が噛み合っていることは必須条件です。
ここが整っていなければ、対策以前の問題になります。
部門選びは、要件を満たしたうえで、そのなかでどこが最も戦いやすいかという順で考えるものです。
結論②:それでも、技術士を先に目指す価値はある
こう書くと「やはりRCCMのために専用の勉強が必要なのか」と思われるかもしれません。
半分は、そのとおりです。
ただ、私が伝えたいのはその先です。
問題Ⅲで問われる論文の型
―― 現状を把握し、問題点を特定し、要因を分析して課題を設定し、解決策を示す
―― この構造は、技術士第二次試験の必須科目Ⅰとほぼ同じです。
扱うテーマも、インフラ老朽化、防災・減災、DX、カーボンニュートラルと、大きく重なります。
この型を先に身につけておけば、RCCMでは問題Ⅲを「得点源」にできる。
そうすれば、限られた準備時間を問題Ⅳ-2と業務経験の暗記に集中投下できます。
私が2021年にやったのは、結果的にそういうことでした。
逆にRCCMから始めると、同じ領域をもう一度、より深く学び直すことになります。
そして現実には、RCCMを取ったところで満足し、技術士への挑戦が止まってしまう方が少なくありません。
管理技術者にはなれた、会社の要請も満たした。
そこで足が止まる。
CPDの講習に追われる姿を見て気後れしていた私が言うのも妙な話ですが、RCCMは通過点にできる資格です。
目的地にしてしまうと、そこで終わってしまう。
このシリーズで書いていくこと
本記事を第1回として、RCCM試験について次の内容を順に書いていきます。
- 第2回:RCCM試験の全体像|4つの科目のうち、どこで差がつくのか
- 第3回:技術士の学習が効くのは問題Ⅲ、効かないのは問題Ⅳ-2
- 第4回:問題Ⅲの攻略|技術士の型をそのまま持ち込む
- 第5回:問題Ⅰ(業務経験)の暗記術|「流れ」を覚えて自分の言葉で埋める
- 第6回:CBT試験当日の実務|受付・持ち物・時間配分
- 第7回:RCCMの先に技術士を置く|順序を逆にすると二度手間になる
合格した経験だけでなく、落ちた経験も含めて書きます。
そのほうが、これから受験される方の役に立つと思うからです。
技術は、あなたのなかにすでにあります。
足りないのは、それを答案という形に翻訳する型と、どこに時間を使うかの見極めだけです。
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【公式LINEで配布しています】
■ 論文セルフチェックリスト20
技術士 必須科目Ⅰ向けに作った点検表です。
このシリーズで書いてきたとおり、RCCMの問題Ⅲと
必須科目Ⅰは論文の骨格が同じですから、
問題Ⅲの骨子づくりにもそのまま使えます。
観点を先に述べているか。課題と解決策が
二度書きになっていないか。20項目で点検できます。
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※本記事は筆者個人の経験と見解に基づくものであり、特定の団体の公式見解を示すものではありません。学習期間や難易度の感じ方には個人差があり、本記事の内容は合格を保証するものではありません。合格率は建設コンサルタンツ協会の公表資料および各年度の合格発表によります。制度に関する記述は令和8年度の受験の手引に基づいていますが、内容は年度によって変更される場合があります。受験にあたっては、必ず実施機関の公表する最新の受験案内をご確認ください。
技術士(建設部門)|沖縄在住の建設コンサルタント/ビジネスコーチ。2部門合格の経験をもとに、地方で働く技術者の資格取得と、輝くキャリアづくりを伴走支援しています。


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