
前回まで、私の2度のRCCM受験を振り返ってきました。
2021年に鋼構造及びコンクリートで合格し、2025年に上水道で1〜2点差の不合格。
どちらの年も、詰まったのは同じ場所でした。
今回は、その理由を掘り下げます。
技術士の学習は、RCCMの問題Ⅲには強く効く。
しかし問題Ⅳ-2には、ほとんど効かない。
なぜこんなにきれいに分かれるのか。
ここが分かると、自分がどこに時間を使うべきかが見えてきます。
「勉強が効く」とは、どういうことか
まず、前提を整理させてください。
ある試験の勉強が別の試験にも効く、というとき、実際には2つの異なるものが移っていると考えると分かりやすくなります。
ひとつは、考え方の枠組みです。
課題をどう立てるか、解決策をどう並べるか、論理をどうつなぐか。
いわば「型」にあたる部分です。
もうひとつは、知識そのものです。
ある工法の適用条件、ある基準の数値、ある現象のメカニズム。
個別の中身にあたる部分です。
このうち「型」は、対象が変わっても持ち運べます。
一方で「知識」は、分野が変われば持ち運べません。
当たり前のことですが、この当たり前が、RCCMの科目構成にきれいに対応しています。
問題Ⅲが問うているのは型で、問題Ⅳ-2が問うているのは知識だからです。
なぜ問題Ⅲには効くのか:3つの理由
理由①:論文の骨格が、そもそも同じ
RCCMの問題Ⅲも、技術士第二次試験の必須科目Ⅰも、記述式論文として求められている構造はほぼ同じです。
現状を把握する。
あるべき姿とのギャップから問題点を特定する。
その要因を分析する。
為すべきこととして課題を設定する。
そして課題に対応する解決策を、複数の観点から示す。
この流れは、試験が違っても変わりません。
というより、技術者が業務で問題解決にあたるときの手順そのものです。
だから、どちらの試験でも同じことが問われます。
技術士の学習でこの型を体に入れていれば、RCCMの答案でも同じ手順で組み立てられます。
逆に、この型を持たないまま臨むと、実務経験がどれだけ豊富でも、答案が「業務報告」や「感想文」になってしまう。
ここが、論文に慣れていない方が問題Ⅲで苦戦する理由です。
私が2021年も2025年も問題Ⅲで詰まらなかったのは、この型が先にあったからだと思っています。
理由②:出題テーマが、事前に公表される
問題Ⅲには、出題されるテーマがあらかじめ公表されるという大きな特徴があります。
これは、技術士の必須科目Ⅰにはない条件です。
技術士では「今年は何が出るか」を政策動向から推し量ることになりますが、RCCMでは範囲が示されている。
準備の効率がまるで違います。
私の場合、2021年も2025年も、公表テーマの中から自分が書けそうなものを絞り込んで骨子を作り、それで対応できました。
2025年は2つに絞って準備し、そのうちの1つが出題されています。
そして重要なのは、公表されるテーマの多くが、技術士の必須科目Ⅰで扱う領域と重なっているという点です。
インフラの老朽化とマネジメント、防災・減災、DXや新技術の活用、カーボンニュートラル、国際競争力。
技術士対策で追いかけた政策動向が、そのまま材料になります。
つまり問題Ⅲは、型も使えて、材料も使える。
二重に有利な科目なのです。
理由③:「どこまで書けば足りるか」の基準を持っている
これは見落とされがちですが、大きな差になります。
技術士の記述式は、一般論で書くと通りません。
制度名や技術名を具体的に挙げ、その分野固有の因果関係まで踏み込む必要があります。
この訓練を積んでいると、答案の解像度に対する感覚が身につきます。
「この書き方だと、どの分野にも当てはまってしまうな」
「ここは具体の工法名まで落とさないと弱いな」
こうした判断が自然にできる。
RCCMの問題Ⅲでも、この感覚がそのまま働きます。

ただし、RCCM特有の制約がひとつある
ここで、前回触れた話を思い出してください。
RCCMはCBT方式で、記述問題に図や表を使えません。
受験の手引にも「記述問題の解答には、図、表の利用は出来ず、文字による解答作成だけとなります」と明記されています。
技術士の答案では、手書きなので図やフローを描けます。
3つの課題を表で整理する、といったこともできる。
RCCMでは、これが一切できません。
つまり技術士の型を持ち込むにしても、図表で処理していた部分を、すべて文章に変換する必要があるわけです。
具体的には、こういう調整が要ります。
- 表で並べていた項目は、「第一に〜。第二に〜。第三に〜。」という文章の列挙に置き換える
- フロー図で示していた手順は、順接の接続詞でつなぐ
- 対比構造は、「一方」「これに対し」といった語で明示する
型そのものは使えます。
ただし表現形式だけは、書き換えが必要です。
ここを意識しないまま本番に臨むと、頭の中の図を文章に起こす作業に時間を取られます。
準備段階で、文章だけで書き切る練習をしておくのが安全です。
このシリーズで扱っている論文の型を、20項目の点検表にまとめています。
問題Ⅲの骨子を作ったあと、これで見直すと抜けが分かります。
公式LINEで配布していますので、よければお使いください。
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なぜ問題Ⅳ-2には効かないのか
さて、問題です。
問題Ⅳ-2は、受験する部門の専門技術知識を問う択一です。
ここには、技術士の学習がほとんど効きません。
理由は、身も蓋もないものです。
型が入り込む余地がないからです。
択一問題には、論理の組み立ても、課題設定も、解決策の展開もありません。
その事柄を知っているか、知らないか。
それだけです。
私は2021年も2025年も、ここで同じ壁にぶつかりました。
2021年、鋼構造及びコンクリートで受験したとき、部門の中核である橋梁関係の設問には歯が立ちませんでした。
当時の記録に「ちょっとの試験勉強ではまったく太刀打ちできなかった」と書いています。
このときは、比較的一般的なコンクリート関係の設問を拾って凌ぎ、他で作った貯金で合格しました。
2025年、上水道では、それが通用しませんでした。
半分ほどは、何を問われているのかすら分からない。
当時の記録がこれです。
問題Ⅳ-2は1日程度の勉強では太刀打ちできないので、わかりやすいところだけ、事前に解いて覚えた。 確実に合格をめざすのであれば、問題Ⅳ-2が重要となると思う。
前回埋められた穴が、今回は埋まらなかった。1〜2点差というのは、そういう差です。
「実務で使っているか」が、そのまま出る
問題Ⅳ-2の性格を一言でいえば、その部門の設計を日常的にやっているかどうかが問われている、ということになります。
問題Ⅲのように事前公表があるわけでもなく、Ⅳ-1のように過去問がそのまま出るわけでもない。
範囲が絞れないので、直前の詰め込みが効きません。
逆にいえば、その部門が主戦場である方にとっては、それほど恐れる部分ではないはずです。
普段やっていることが出るだけですから。
私が2021年に凌げたのも、土木の共通基盤に近い部門だったからにすぎません。
境界線を一枚の図にすると
ここまでを整理すると、こうなります。
| 科目 | 問うているもの | 技術士の学習 | 直前の対策 |
|---|---|---|---|
| 問題Ⅰ(業務経験) | 自分の実務の記憶 | 効かない | 効く(暗記) |
| 問題Ⅱ(法制度・一般・倫理) | 一般知識 | 部分的に効く | 効く(過去問) |
| 問題Ⅲ(管理技術力) | 論理の型 | 強く効く | 効く(骨子準備) |
| 問題Ⅳ-1(土木の基礎) | 共通の基礎知識 | あまり関係ない | 効く(過去問) |
| 問題Ⅳ-2(部門の専門技術) | 部門固有の知識 | 効かない | 効きにくい |
見ていただきたいのは、「技術士の学習が効く」と「直前の対策が効く」が、ほぼ重なっていることです。
型として持ち運べるもの、範囲が見えているもの、過去問で追えるもの。
これらはすべて、事前の努力で動かせます。
動かせないのは、問題Ⅳ-2だけです。
だから、準備はこう組み立てる
この構造から導かれる戦略は、シンプルです。
第一段階:問題Ⅳ-2で、自分がどれくらい取れそうかを見積もる
過去問を1年分でも解いてみれば、感覚は掴めます。
「半分は分かる」のか「ほとんど分からない」のかで、その後の計画がまったく変わります。
ここを飛ばしたのが、私の2025年の失敗でした。
第二段階:見積もりに応じて、他の科目の目標を決める
問題Ⅳ-2が厚く取れそうなら、他は標準的な準備で足ります。
逆に薄いと分かったなら、問題Ⅲと業務経験の記述で確実に稼ぐ設計にする必要があります。
ここは事前の努力で動く部分なので、時間さえかければ応えてくれます。
第三段階:問題Ⅳ-2は、範囲を絞って捨てるところを決める
全部やろうとすると、時間がいくらあっても足りません。
私が2025年にやった「わかりやすいところだけ事前に解いて覚えた」というのは、方向としては間違っていなかったと思います。
足りなかったのは、その量でした。

技術士を目指す方へ
最後に、いま技術士の学習をされている方に向けて。
あなたがいま身につけている型は、RCCMでそのまま得点源になります。
問題Ⅲは、技術士の必須科目Ⅰの構造とほぼ同じで、テーマも重なり、しかも事前に公表される。
これほど条件のいい科目はありません。
そのうえで、RCCMを受けるなら自分の主戦場に近い部門を選ぶこと。
そうすれば問題Ⅳ-2の壁も低くなり、短期間で合格を狙えます。
私が2021年に経験したのは、まさにその状態でした。
逆にいえば、技術士の学習を積んでいても、部門選びを誤れば落ちます。
私がその証拠です。
次回からは、実際の書き方に入ります。
問題Ⅲで技術士の型をどう持ち込むか。
図表が使えない制約の中で、どう構成するか。
具体的にお伝えしていきます。
- 第1回:RCCMは技術士の勉強だけで受かるのか|合格した年と、1〜2点差で落ちた年の違い
- 第2回:RCCM試験の全体像|4つの科目のうち、どこで差がつくのか
- 第3回:技術士の学習が効くのは問題Ⅲ、効かないのは問題Ⅳ-2(本記事)
- 第4回:問題Ⅲの攻略|技術士の型をそのまま持ち込む
- 第5回:問題Ⅰ(業務経験)の暗記術|「流れ」を覚えて自分の言葉で埋める
- 第6回:CBT試験当日の実務|受付・持ち物・時間配分
- 第7回:RCCMの先に技術士を置く|順序を逆にすると二度手間
技術は、あなたのなかにすでにあります。
足りないのは、それを答案という形に翻訳する型と、どこに時間を使うかの見極めだけです。
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■ 論文セルフチェックリスト20
技術士 必須科目Ⅰ向けに作った点検表です。
このシリーズで書いてきたとおり、RCCMの問題Ⅲと
必須科目Ⅰは論文の骨格が同じですから、
問題Ⅲの骨子づくりにもそのまま使えます。
観点を先に述べているか。課題と解決策が
二度書きになっていないか。20項目で点検できます。
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※本記事は筆者個人の経験と見解に基づくものであり、特定の団体の公式見解を示すものではありません。学習期間や難易度の感じ方には個人差があり、本記事の内容は合格を保証するものではありません。制度に関する記述は令和8年度の受験の手引に基づいていますが、内容は年度によって変更される場合があります。受験にあたっては、必ず実施機関の公表する最新の受験案内をご確認ください。
技術士(建設部門)|沖縄在住の建設コンサルタント/ビジネスコーチ。2部門合格の経験をもとに、地方で働く技術者の資格取得と、輝くキャリアづくりを伴走支援しています。

