
答案の骨子を作る。
専門用語を整理する。
文章を読みやすくする。
AIに手伝ってもらえることが、この1年で一気に増えました。
私も使っています。
作業時間は、確実に短くなりました。
だからこそ、考えておきたいことがあります。
短くなった分の時間を、何に使うか。
文章を整える作業から解放されたぶん、もう一歩先に進める。
私はそう考えています。
今日はその話です。
AIで答案は整う。その先に何を置くか
先に、これは私の仮説だと断っておきます。
得点分布を確認した話ではありません。
似たようなAIに、似たような問いを投げ、一般的な情報だけを材料にする。
そうすると、出てくる課題も対策も似てくるのではないか。
一定の水準の答案が増えて、合否の境目に人が集まるのではないか。
そんな見通しを持っています。
ただ、似ているから不合格になる、という話をしたいわけではありません。
私が気をつけたいのは、文章が整った時点で、考える作業まで終わった気になることです。
対策を一つ選んだとして、なぜそれを選んだのか。
他に何があって、何を基準に比べたのか。
そこを聞かれて言葉が出てこないなら、まだ自分の答案になっていません。
その「なぜ」を埋める材料は、二つしかないと思っています。
自分の経験と、自分で取りに行った情報です。
ベテランの強みは「なぜそうしたか」にある
長く現場にいた方には、積み重ねたものがあります。
時間が足りなかった。
予算に制約があった。
関係者の意見がそろわなかった。
その中で何を優先し、何を見送り、どう進めたのか。
強みは、経験の数ではなく、その判断の中にあります。
たとえば維持管理の話なら、「点検を効率化する」で止めない。
何を優先して確認するのか。
どの情報を判断に使うのか。
どこに人の目を残すのか。
自分の経験は、その具体性を支える材料になります。
ただし、条件が一つあります。
書きたい経験を押し込むのではなく、問われたことに答えるために経験を使う。
私自身、受験生の頃の添削に「題意に即してない」と何度も書かれました。
知識はあったのに、聞かれたことに答えていなかったのです。
経験があるほど、書きたいことは増えます。
そこは意識して抑える必要があります。
AIは、経験の整理を手伝えます。
けれど、その場で何を見て、何に迷ったかは、自分から出すしかありません。
若手だった私は、図書館と書店にいた

では、経験が少ない方はどうするか。
経験が積み上がるのを待つのではなく、人の経験を学びに行けばいい。
私はそう考えて、実際にそうしていました。
図書館と書店に通って、実例を探し回りました。
専門書だけではありません。
一般向けの本も読み漁りました。
いまでも覚えているのが、避難訓練の話です。
参加者が集まらない訓練に、高台の温泉施設の無料券を組み合わせた自治体がある、という記述に出会いました。
書名も自治体名も、いまは確認できていません。
私の記憶として読んでください(たしか、NHK出版新書だったかと・・・)。
引っかかったのは、温泉そのものではありませんでした。
「参加してください」と呼びかけるのではなく、参加したくなる理由を作る。
その発想のほうです。
防災を考えていたはずが、人がどう動くかの話につながる。
土木の知識だけで考えていたときとは、違う角度が入ってきます。
読んだ事例をそのまま答案に貼るのではありません。「この考え方は、別の課題にも使えないか」と置き換えてみる。
そこまでやって、はじめて自分の材料になります。
なお、答案の根拠として使うときは、元の資料と条件を確認してください。
記憶のままで書くと、私のようになります。
130冊の始まりは、上司の一言でした
多い年で、130冊ほど読みました。
続けるうちに、知識と知識がつながる感覚が出てきます。
関係のない本の話が、現場の課題と結びつく。
違う分野の工夫が、土木の問題を考える手がかりになる。
ただ、最初からそう読めたわけではありません。
きっかけは、上司の助言でした。
それを受け入れ、その後に速読を身につけて、読む量を増やしていきました。
振り返って大きかったのは、130冊という数字ではありません。
助言を素直に受け入れて、行動を変えたこと。
続けるために、読み方そのものを身につけたこと。
知識がつながる感覚は、その積み重ねの先にありました。
ですから、同じ冊数を読んでくださいという話ではありません。
一つ助言をもらったら、一つやってみる。
続かなければ、やり方のほうを変える。
伝えたいのは、そちらです。
多くの人は、有益な助言や情報を見つけても行動しません。
土木技術 × 技術士 × 自分だけの「○○」
藤原和博さんの『必ず食える1%の人になる方法』を読んでから、自分の強みの組み合わせについて考えるようになりました。
私なりに置き換えると、こうなります。
土木技術 × 技術士という資格 × 自分だけの「○○」
これは、資格があれば成功するという式ではありません。
同じ専門と同じ資格を持つ人がいる中で、自分は何を重ねていくのかという問いです。
Webにも、価値のある情報はたくさんあります。
紙の本なら特別で、人から聞けば一次情報になる、という単純な話でもありません。
自分で問いを持って探したか。
背景まで聞いたか。
自分の現場に置き換えて考えたか。
差がつくのは、そこだと思っています。
そして資格を取ることは、その途中にあります。
試験のために身につけた「自分で調べ、自分で考え、動く力」は、合格したあとのほうが長く使います。
私が伴走で一緒に考えたいのも、そこを含めてです。
今日、検索の先へ一歩だけ

大きなことをする必要はありません。
次のうち、一つだけ試してみてください。
答案の対策を一つ選び、理由を5分で説明する。
「なぜそれなのか」「どんな条件なら使えるのか」。
詰まったところが、次に調べる場所です。
まずはこれだけでも構いません。
図書館か書店で、専門から少し離れた棚を30分見る。
人の行動、組織、地域の取り組み。
気になった事例を一つと、「自分の仕事なら何に使えるか」をメモします。
閲覧できる社内の過去資料を、10分だけ読む。
結果ではなく、なぜその方法を選んだかを見てください。
分からなければ、担当した人に聞く問いを一つ作ります。
一つ、注意があります。
本で知った事例や人から聞いた話を、自分が経験したこととして書かないでください。
学んだことは学んだこととして、判断を深める材料に使えば十分です。
おわりに
AIを使いこなすことと、自分で動くこと。
私は両方続けるつもりです。
AIが文章を整えてくれる。
その間に、自分は何を経験しに行くか。
15年前の私は、図書館の棚の前に立っていました。
何を探しているのかも、はっきりしないまま。
いま思えば、あの時間が一番、自分を作りました。
答案の書き方は、あとから覚えられます。
けれど、自分が何を見て、何に迷ったかは、その場に行った人にしか残りません。
AIが速くなるほど、その時間の価値は上がると思っています。
自分の考えを、答案にするために
経験や知識を持っていても、問われたことに答える形へ整理するのは、別の作業です。
公式LINEでは、技術士の必須科目Ⅰ向けに作った「論文セルフチェックリスト20」を配布しています。
自分で考えた骨子や答案を見直すときにお使いください。
参考書籍:藤原和博『必ず食える1%の人になる方法』/筑摩書房
※AI普及後の答案や得点分布についての見通しは、筆者の仮説です。学習方法は個人の経験に基づくもので、合格を保証するものではありません。
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