口頭試験を終えたあと、私は東京の街を、ゾンビのように歩いていました。
頭の中にあったのは、ただ一言です。
「やってしまった……」

技術士の口頭試験を受けたのは、これが2回目でした。
1回目は、試験中に集中の波に乗ったような感覚がありました。
試験室を出たときには、「よし」という手応えもありました。
ところが、令和元年度に受けた2回目は正反対でした。
同じ私なのに、なぜここまで手応えが違ったのか。
振り返ると、差は「事前の情報」と「準備の深さ」にありました。
この記事では、2度の受験をもとに、技術士第二次試験の口頭試験に向けて準備しておきたいことを4つ紹介します。
筆記試験に合格された皆さんへ
11月4日は、技術士第二次試験の筆記試験の合格発表日です。
合格された皆さん、本当におめでとうございます。
技術士まで、あと少しです。
ここまで来たからには口頭試験にも合格して、来年は技術士として登録しましょう。
ただ、筆記に合格した安心感から、準備をゆるめるのは危険です。
口頭試験は、原則20分です。
始まってしまえば、あっという間に終わります。
限られた時間で自分の経験と考えを伝え切るために、できる限りの準備をしておくことをおすすめします。
口頭試験では何を確認されるのか

技術士第二次試験の実施大綱には、口頭試験について次のように書かれています。
口頭試験は、技術士としての適格性を判定することに主眼をおき、筆記試験における記述式問題の答案及び業務経歴を踏まえ実施するものとし、筆記試験の繰り返しにならないよう留意する。
総合技術監理部門を除く技術部門では、次の4つが試問されます。
| 区分 | 試問事項 | 配点 |
|---|---|---|
| Ⅰ 技術士としての実務能力 | コミュニケーション、 リーダーシップ | 30点 |
| Ⅰ 技術士としての実務能力 | 評価、マネジメント | 30点 |
| Ⅱ 技術士としての取組姿勢 | 技術者倫理 | 20点 |
| Ⅱ 技術士としての取組姿勢 | 継続研さん | 20点 |
試問時間は20分で、必要に応じて10分程度延長されることがあります。
口頭試験は、知識を確認するだけの試験ではありません。
これまでの業務で何を考え、誰と調整し、どう判断したのか。
そして、技術士としてふさわしい行動ができるのか。
それを、自分の言葉で説明する試験です。
1回目と2回目で、何が違ったのか
1回目は、質問を想定して準備していた
1回目のときは、「こういう質問が出るかもしれない」という事前の情報がありました。
それをもとに、聞かれそうな質問をできる限り洗い出し、自分なりの答えを用意して本番に臨みました。
口頭試験対策のセミナーもいくつか受け、試験の前日には東京で模擬面接も受けました。
本番では、準備してきた内容と質問がつながり、落ち着いて答えることができました。
2回目は、制度が変わった最初の年だった
2回目に受けた令和元年度は、試験制度が変わった最初の年でした。
事前の情報がほとんどない中で、いまでは当たり前になったリーダーシップ、コミュニケーション、マネジメントについての質問を受けました。
ところが私は、試験官が何を確かめようとしているのかを、十分につかめませんでした。
求められている内容を、答えられなかったのです。
模擬面接は受けていました。
ただ、1回目ほど徹底できていなかったと思います。
年末で仕事が忙しかったこともあります。
そして心のどこかに、「一度合格しているから大丈夫だろう」というおごりがあったのかもしれません。
その結果が、試験のあとの「やってしまった……」でした。
結果は、合格でした。
ただ、のちに得点を開示してみると、「評価、マネジメント」は60.0%。合格ラインちょうどでした。
あと少し準備が足りなければ、落ちていた点数です。
その内訳は、こちらの記事に書いています。
口頭試験に向けて準備したい4つのこと

① 模擬面接を繰り返して、場慣れする
一つ目は、場慣れです。
上司や同僚、受験仲間、対策講座などを頼って、できるだけ多く模擬面接を経験してください。
知識があっても、面接の場で言葉にできなければ伝わりません。
おすすめは、模擬面接を録画することです。
見返すときは、次の点を確かめます。
- 質問に、結論から答えているか
- 話が長くなっていないか
- 声の大きさと速さはちょうどよいか
- 視線や姿勢は落ち着いているか
- 無意識の口癖や動作がないか
- 身振り手振りも活用しているか
自分の録画を見るのは、少し恥ずかしいものです。
それでも、自分を外から見られるので、直すところがよく分かります。
私の場合は、上司から服装について「短いソックスは履くな」と言われました。
答えの中身だけでなく、態度や身だしなみも含めて確かめておきましょう。
口頭試験のイメージは「言葉のキャッチボール」です。
剛速球や変化球を投げる必要はありません。
試験官が構えてるグローブに的確に投げ返すだけです。
② 想定問答を、骨子で準備する
いまの試験制度は、以前に比べて確認される資質能力(コンピテンシー)がはっきりしています。
そのため、聞かれる可能性のある質問は、事前にできる限り準備しておくことが大切です。
ただし、模範回答の丸暗記はおすすめしません。
質問の言い方が少し変わっただけで、答えられなくなるからです。
想定問答は、次の順番で整理すると答えやすくなります。
- 結論
- そう考えた理由
- 自分の業務経験
- 技術士として、今後どう行動するか
一字一句を覚えるのではなく、「何を伝えるか」という骨子を、自分の言葉で話せる状態にしておきましょう。
③ 出願時の「業務内容の詳細」を見直す
口頭試験は、筆記の答案と業務経歴を踏まえて行われます。
特に、出願のときに提出した「業務内容の詳細」は、あらためて丁寧に読み直してください。
出願した時点では深く考えていなかったことや、もう記憶が薄れていることがあるかもしれません。
次の視点で、担当した業務を掘り下げてみてください。
- その業務で、何が問題だったのか
- 解決すべき課題は何だったのか
- どんな選択肢を比べたのか
- なぜ、その解決策を選んだのか
- 自分はどんな立場で、どんな役割だったのか
- 関係者と、どう調整したのか
- 品質、コスト、工程、リスクをどう管理したのか
- 結果を、どう評価したのか
- いまなら、どう改善するか
20分で話す材料は、すでにあなたの経験の中にあります。
新しい実績を足すのではなく、自分の経験を掘り下げて、質問に合わせて言葉にできるようにしておくことが大切です。
経歴票の掘り下げ方は、こちらの記事でも詳しく書いています。
④ 最後は「総力戦」で準備する
口頭試験まで進んだ方の多くは、ここまでに、たくさんの人の協力を受けてきたと思います。
口頭試験の準備は、さらに一人では終わらなくなります。
会社の上司や同僚、受験仲間、講座の講師、そして家族。
頼れる人には、できるだけ力を借りましょう。
私も、想定問答を家族に読んでもらい、模擬面接に付き合ってもらいました。
専門外の家族だからこそ、次のようなことに気づいてくれます。
- 専門用語が多くて、分かりにくい
- 質問の答えになっていない
- 説明が長い
- 表情が硬い
- 自信がなさそうに見える
自分では気づきにくい癖を、少しやさしめの辛口で言ってもらう。これが、とても効きます。
口頭試験は、準備した分だけ余裕が生まれる

口頭試験は20分です。
短いからこそ、準備の差がそのまま出ます。
私の1回目と2回目の違いは、能力の差ではありませんでした。
事前の情報を集め、質問を想定し、模擬面接を繰り返し、自分の経験を言葉にする。
そこまで準備できていたかどうかの差でした。
筆記試験に合格した皆さんは、技術士まであと少しです。
ここまで積み重ねてきた努力を、最後の20分で伝え切れるように、準備を進めてください。
あなたが来年、技術士として登録できることを願っています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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- 口頭試験 想定問答シート:よく聞かれる質問ごとに、「結論・理由・経験・今後の行動」の骨子を書き込める表です。模擬面接の振り返り表と、技術士法の確認表も入っています
- 業務経歴票深掘りシート:業務内容の詳細を、質問に耐えられるところまで掘り下げるためのシートです
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