朝焼けの港とクレーンの風景

「好きなことで事業を始めれば、うまくいく」

そう思っていた時期が、私にもありました。

会社員を続けながらコーチングの事業を始めた私は、ある問いの前で立ち止まることになります。

「あなたの専門性は、何ですか?」

最終話の今日は、事業を始めてからつまずいたこと、

遠回りの末にたどり着いた場所、

そして、いまの私の等身大の姿を書きます。

始めてみて、初めて分かったこと

昼は建設コンサルタント、夜はコーチング。

二足のわらじで、まず気づいたことが二つあります。

一つ目は、会社員はとても恵まれていたということです。

一人で事業をすると、印刷ひとつでもコンビニに走ります。

発信を続けなければ、誰にも見つけてもらえません。

動かなければ、仕事は一件も入ってきません。

会社では、仕事も、電気代も、名刺も、用意されていました。

当たり前だと思っていたものが、当たり前ではありませんでした。

二つ目は、コーチングを学んだら、本業の仕事ぶりが変わったということです。

相手の立場で話を聴き、本当の困りごとをつかめるようになると、発注者の方から感謝される場面が増えました。

私が担当した業務が、県の優良業務として3年連続で表彰していただいたこともあります。

学んだことは、思いがけない場所でつながる。

これは大きな発見でした。

そして、壁にぶつかった

一方で、コーチングの事業そのものは、壁にぶつかりました。

相談に来られる方の多くが求めていたのは、「事業の売上を伸ばしたい」ということでした。

そこに応えるには、経営や戦略、集客の知識と、実際にやってきた経験が要ります。

コーチングには「答えは相手の中にある」という考え方があります。

ただ、選択肢そのものを知らない方には、情報や道筋を示す力も必要です。

経営の経験が浅い私は、早く結果を求める方を支えきれない場面がありました。

そのうえ、オンラインのコーチングは、始める人が年々増えていました。

そんな中で、とある経営者から、あの問いを投げかけられたのです。

「あなたの専門性は、何ですか?」

胸に刺さりました。

資格も取った。

学びもした。

それでも、「私だからこそ渡せるもの」を、私はまだ言葉にできていませんでした。

答えは、足元にあった

最後に、あなたへ

考え続けて、ようやく気づきました。

私の専門性は、遠くにあるのではありませんでした。

ずっと足元にあったのです。

  • 学歴の壁に悩みながら、ゼロから積み上げてきた建設コンサルタントとしての20年
  • 何度も不合格になりながら、建設部門の2つの選択科目で技術士に合格した経験
  • 資格に走って家族との時間を失い、玄関の前で立ち尽くした夜
  • そこから学び直した、人の本音に寄り添って話を聴く力と伴奏力

どれか一つなら、持っている人はたくさんいます。

でも、これを全部重ね合わせた人は、そう多くないのかもしれない。

そう思えたとき、少しだけ、自分を認められた気がしました。

だから私は、軸を決めました。

昔の私のように、

「学生時代はあまり勉強してこなかったけれど、技術者としてもっと成長したい」

と思っている人の、技術士試験に伴走する。

過去の自分を、助けに行く。

これが、私がたどり着いた形です。

いまの私は、まだ途中にいる

ここで「そして成功しました」と書ければ、きれいに終われるのかもしれません。

でも、正直に書きます。

私は、まだ途中にいます。

ブログを書き、受験生の答案に向き合い、ときには自分が受ける別の資格試験で、手ごたえのなさに頭を抱えています。

週4日は会社で働き、夜や休日に、この仕事を少しずつ育てています。

それでも、あの帰り道の私とは、決定的に違うことがあります。

いまの私は、「なぜ働くのか」を、自分の言葉で答えられます。

子どもたちのサッカーの送り迎えをして、妻と同じ話題で笑って、

その合間に、誰かの挑戦を手伝っている。

大きな成功ではありません。

でも、これが私にとっての、ふつうの幸せです。

最後に、あなたへ

このシリーズでは、私の不器用な20年を読んでいただきました。

毎日「なぜ働くのか」と問いながら歩いた帰り道。

資格に人生を賭けて、家族との時間を失ったこと。

玄関のドアが開けられなかった夜。

夫婦での学び直し。

事業を始めてからのつまずきと、軸を決め直したこと。

かっこいい話は、一つもなかったと思います。

それでも、だからこそ伝えられることがあると信じています。

私の最初の一歩は、飲み会で聞いた資格の話でした。

妻の一歩は、一本の動画でした。

一歩は、案外小さくていいのだと思います。

もし今、かつての私と同じ場所、「変わりたいのに、一歩が出ない場所」に立っているなら。

その一歩が、誰かに話してみることなら、私はここにいます。

あなたへの問いかけ

あなたのこれまでの人生で、「あの頃の自分に教えてあげたいこと」は何ですか。

それが、あなたにしか渡せない価値なのかもしれません。


5話にわたる長い話を、最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。

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第1話「なぜこの会社で働くのか」はこちら

第2話「資格を取れば人生が変わると思っていた」はこちら

第3話「玄関のドアが、開けられなかった」はこちら

第4話「10万円の給付金を『貯金』しなかった夫婦の話」はこちら

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“【第5話】「あなたの専門性は何ですか?」” に対して1件のコメントがあります。

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