筆記試験が終わって、結果が出るまでの数か月。

この時間をどう使うかで、口頭試験の結果は変わります。

口頭試験は、当日の対応力を見る試験ではありません。

準備した分だけ返ってくる試験です。

ただし、準備の方向を間違えている方をよく見かけます。

想定問答集を作り込む前に、直しておくべき理解がいくつかあります。

今回はそこを書きます。

口頭試験は、聞かれることがほぼ決まっている

まず安心していただきたいことがあります。

口頭試験は、進め方も問われる内容も、形式が定まっています。

何を聞かれるかは、事前にかなりの精度で読めます。

そして、質問の土台になるのは提出済みの業務経歴票です。

試験官はそれを読んでから部屋に入ってきます。

ですから準備の中心は、想定問答集を作ることではありません。

自分が出した業務経歴票を、もう一度読み込むことです。

ここを外すと、こうなります。

本番でうまい答えを思いつく。

でも経歴票にはそれが書いていない。

試験官は書いてあることを前提に聞いていますから、話が噛み合わなくなります。

書いていないことを本番で話すと、かえって不利になります。

問われるのは6つ。ただし、採点は4つにまとめられる

	6つの石を4つの器に分けて入れる様子。口頭試験のコンピテンシーの束ね方

日本技術士会が示す資質能力(コンピテンシー)のうち、口頭試験で問われるのは6つです。

専門的学識と問題解決は、筆記試験の側で確認されます。

ただ、実際の採点はこの6つを4つの項目に束ねて行われます。

試問事項含まれる資質能力配点
Ⅰ 実務能力①コミュニケーション、
リーダーシップ
30点
Ⅰ 実務能力②評価、
マネジメント
30点
Ⅱ 適格性①技術者倫理
20点
Ⅱ 適格性②継続研さん
20点

合格には、4項目すべてで60%以上が必要です。

1つでも下回れば、他がどれだけ高くても合格になりません。

試問時間は20分程度です。

この束ね方には、実務上の意味があります。

リーダーシップの受け答えが弱くても、コミュニケーションで挽回できるということです。

逆も同じです。

1つの項目に2つの資質能力が入っていますから、片方だけで落ちることはありません。

ただし、これは項目をまたいでは効きません。

実務能力①が満点でも、実務能力②が59%なら不合格です。

(資質能力の定義は要旨で示しています。詳細は日本技術士会の公表資料をご確認ください)

私は「評価・マネジメント」で60.0%でした

先日、令和元年度の自分の点数を開示請求で取り寄せました。

口頭試験の結果は、こうでした。

試問事項得点満点得点率
コミュニケーション
リーダーシップ
19.003063.3%
評価・マネジメント18.003060.0%
技術者倫理13.502067.5%
継続研さん13.502067.5%

合格基準は60%以上。

評価・マネジメントは、ちょうど18.00点でした。

0.5点低ければ、そこだけで不合格です。

他の3項目がどれだけ良くても関係ありません。

当時の私の手ごたえとして、

試験制度の変更初年であったことから情報がほとんどなく、苦戦しました。

7年経って数字を見て、はじめて分かりました。

私は、評価とマネジメントを取り違えたまま話していたのだと思います。

これから書く3つは、他人の失敗談ではありません。

取り違えている人が多い3つ

リーダーシップは「引っ張ること」ではない

よくある答え方

「私が中心となって、プロジェクトを進めました」

なぜ加点されないか

主導したという話は、リーダーシップの説明になっていないためです。

試験官が確認したいのは、統率した事実ではありません。

本来問われていること

多様な関係者の利害を調整し、取りまとめたか。

相反する要求に対して技術的な折衷案を示し、双方に譲歩してもらったうえで合意に至ったか。

ここが要点です。

一方の希望を全面的に通したのであれば、それは利害調整をしていません。

押し切っただけです。

直し方

誰と誰が対立していたのかを、具体的に言えるようにしてください。

そして、それぞれに何を譲ってもらったかを1つずつ挙げられるようにします。

「地元住民は早期完成を求め、漁業関係者は施工時期の制限を求めていました。

工区を分割し、漁期を外した区間から着手することで、住民には全体工期の延長を、

漁業者には一部区間での施工を受け入れていただきました」

この形になっていれば、リーダーシップの説明として成立します。

マネジメントは「コスト削減」ではない

よくある答え方

「コストを削減しました」

なぜ加点されないか

削減は結果であって、配分の判断ではないためです。

安く済んだという話からは、何をどう考えて資源を割り振ったのかが見えません。

本来問われていること

人員、設備、金銭、情報といった資源を、どう配分したか。

そして重要なのは、どこに重点を置いたかだけでなく、裏返してどこで力を抜いたかです。

すべてに全力を注いだという話は、配分をしていないのと同じです。

直し方

重点を置いた場所と、あえて優先度を下げた場所を、セットで言えるようにしてください。

「現地調査の頻度は基準の倍に増やしました。

一方で図面の作成は標準図の流用を認め、その分の時間を調査に回しました」

削った側を自分から言えると、配分の判断をしたことが伝わります。

評価は「うまくいきました」ではない

よくある答え方

「無事に完了しました」

なぜ加点されないか

これは報告であって、評価ではないためです。

評価とは、結果や波及効果を検証し、次の業務の改善につなげることを指します。

本来問われていること

その業務は100点満点で何点だったか。

そして、あと何をすれば点数が上がったか。

直し方

成功談で終えず、改善点を自分から言えるようにしてください。

「80点だと考えています。

設計は要求性能を満たしましたが、地元説明の資料が専門的すぎて、

理解いただくのに想定より時間がかかりました。次は3D表示を併用します」

減点されそうに感じるかもしれません。

逆です。改善点を自分で言えることが、評価ができている証拠になります。

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では、いま何をすべきか

図面の同じ一点を両側から指す手。利害調整によって合意に至る場面

想定問答集の作成は、筆記の結果が分かってからで間に合います。

合格が確定してから作っても遅くありません。

いまやるべきことは、2つです。

1つ目。

業務経歴票を、印刷して読み返す。

画面ではなく紙をおすすめします。

自分が半年前に何を書いたか、意外なほど覚えていないものです。

2つ目。

その業務が「対立と折衷」の構図になっているかを確認する。

これが今日いちばんお伝えしたいことです。

誰とも衝突せず、順調に終わった業務は、技術的に優れていても語りにくいのです。

利害調整の話ができず、資源配分の判断も見えにくい。

詳細業務としては、扱いが難しくなります。

もし経歴票に書いた業務が「順調に終わった良い仕事」であれば、いまのうちに掘り直してください。

表面上は順調でも、内側では必ず何かを削り、誰かに譲ってもらっているはずです。

それを思い出す作業に、この数か月を使ってください。

私が18.00点だった理由も、たぶんここにあります。

業務の説明はできていた。

でも、どこで力を抜いたか、何点で何が足りなかったかを、自分の言葉で持っていませんでした。

おわりに

口頭試験は、20分で終わります。

その20分で話す内容は、いまの数か月で決まります。

何を思い出しておくか、何を言葉にしておくか。

それだけです。

18.00点という数字を7年後に見て思うのは、あのとき経歴票をもう一度読み返していれば、という一点です。

時間はありました。

ただ、何を、どう読み返すべきかを知りませんでした。

いま、その時間と具体的な対策方法が、あなたにはあります。


18.00点という数字を、あなたに繰り返してほしくありません。

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